Faylay~しあわせの魔法
不死鳥と王冠を模した金の紋章を纏った巨大戦艦ティル・ジーアは、ゴウゴウと音を立てながら揺れる緑白色のカーテンを突き破った。

「被害状況は」

ブリッジの艦長席に座り、前方にある巨大スクリーンに映し出される緑白色の見事な煌きを睨むように見つめるのは、星府軍元帥アレクセイ。

「第一エンジン、第二エンジン完全に停止。第三、第四エンジンは問題ありませんので、航行に支障はありません。外壁も一部剥がれ落ちましたが問題ありません。ですが……」

オペレーターを務める将校が、眉を顰めながらアレクセイを振り返る。

「鼠を追うのに、この艦では大きすぎます。逃げられますよ」

「それでいい」

アレクセイの返答に、将校は更に眉を顰めた。

「今回の目的は皇女殿下ではない。布石を投じるだけだ」

アレクセイは漆黒の瞳を冷たく輝かせた。





「野郎ども、何が何でもリディル様たちを連れ帰れ!」

「おお!」

吹雪く海上では、海賊船から続々と小船が出て行く。その中のひとつにブラッディも乗り込んだ。

大型船では目立ちすぎる。機動力のある小型船でフェイレイたちを拾った後、本船には戻らずにそのまま逃げる算段だが、そこまで辿り着けるのか、そして辿り着いてもらえるのかが問題だった。

「チイッ、あんなデカい船が目の前に来るまで気づかないなんてな。星府軍もやってくれる!」

焦りながらも、流氷を避けながらではスピードも出ない。

「頼むフェイレイ、無事に連れてきてくれ」

神に祈りたい気持ちで呟く。


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