Faylay~しあわせの魔法
「くっそ、戦艦は乱気流を潜れるんだ?」

「無事ではすまないでしょうけれどね。アレクセイがこんな荒業を使ってくるなんて、思えないのですけれど……」

リディルの他に目的があるとも思えないが、彼を良く知るローズマリーには、何かしっくり来ない。

もしかしたら、指揮官はアレクセイではないのかもしれない、とも思った。

こんな風にわざと戦艦を見せ付けて、逃げる隙を与えて。軍には何か考えがあるのだろうか……。

ローズマリーの胸には不安がにじり寄っていく。

「とにかく、船長のところへ。出来るだけ星府軍をかく乱しながら迎えに来てくれるって言ってたから」

「ええ」

走りながら普通に会話する2人の隣で、ヴァンガードはゼエゼエ言っていた。

「僕、絶対、体力つけます……」

ヒリヒリ痛む喉に涙目になりながらも、必死についていく。

リディルを護ると決めたからには、弱音など吐いていられない。


雪の精霊シェニーがハラハラ舞う雪に混じり、4人を先導するように闇の中をすい、と飛んでいく。

彼女たちの顔色が良くない。

星府軍が悪しき心を持って近づいてきているからに違いなかった。

(父さん)

フェイレイもリディルも、振り返りたくて仕方なかった。

けれどセルティアのときと同じ、振り返ることも立ち止まることも許されなかった。今は逃げることだけに集中しなければならない。
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