Faylay~しあわせの魔法
ここで逃したらアリアの仇を討つどころか、フェイレイやリディルの前に立ち塞がる最大の壁となる。

そんな彼にやられるわけにはいかない。

家族を護る父として。ここで倒しておかなければ。


更に力を込めて剣を振り下ろすと、その圧力に湖の氷に亀裂が走り、冷たい水柱が立ち上がった。

氷の下から吹き上げてくる、心臓を凍りつかせるほどの冷たい飛沫を浴びながら、割れた氷の上を軽やかに渡ってランスに近づくアレクセイ。

近づくことを許さぬように、ランスの大剣が振られる。

ブウン、と空気を斬ると、そこから衝撃波が走った。四方に散るそれはアレクセイを的確に捉えるも、あっさりと跳ね返されてしまう。

後方で更に湖の氷が激しい音をたてて割れる。

その音にチラリと視線をやって、アレクセイは剣を上へと構えた。

「貴方では、私を倒すことは出来ない」

一気に下へと振り下ろすと、ランスの放った衝撃波よりも更に大きなものが、目にも留まらぬスピードで突っ込んできた。

それを避けることは敵わない。

ドオオオ、と爆発音が鳴り、ランスは吹き飛んだ。冷たい氷の上をズズズと滑りながら転がっていく。

「私すら、倒すことは出来ない」

光のような速さで転がるランスに追いつくと、剣を心臓目掛けて突き立てた。

< 341 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop