Faylay～しあわせの魔法
「水着かぁ……」

エスティーナの女の子たちは皆、陽に焼けた健康的な肌の色をしている。

それはとても魅力的だったが、フェイレイの頭の中に浮かぶのは、今通り過ぎていった女の子たちが着ているような、南国の大きな花をあしらったパレオ付きの赤いビキニを、リディルが着ている姿だった。

赤い水着は、色白のリディルにとても似合うだろう。

眩しい太陽の光に翡翠の瞳を細めながら、白浜に打ち寄せる波に小さな足を浸す彼女は、フェイレイを振り返る。


『フェイ、早く泳ぎに行こう？』


「フェイ、早く役所に行こう？」


妄想の中の声と現実の声が重なり、フェイレイはハッと我に返った。

「はあっ！　うん、行こう！　海に！」

「役所」

「あれっ、そうだった。役所、行こう！」

アハハと笑いながら頭を掻くフェイレイは、店の軒先に並んだ果物の山に突っ込み、辺り一面に散らかしてしまった。

「ああっ！　すみません！」

ペコペコ頭を下げながら果物を拾い集め、ワゴンに堆く積み上げる彼のスピードがあまりにも速すぎて、店番をしていたふくよかな女性は、怒ることも礼を言うことも忘れてポカンとしていた。

そんな姿を見て、また呆けるヴァンガード。
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