Faylay~しあわせの魔法
年の半分以上が濃い霧に覆われているという、北の大国アライエル。

オースター島を出て2日もすると流氷はすっかり無くなり、徐々に気温が上がってきた。それとともに薄い霧に覆われ始める。

「もうすぐ港だ。下船の準備しろよぉ~」

ブラッディは船首から海を眺めながら煙草をふかす。

星府軍の追っ手はなかったし、魔族にも数回襲われただけで終わった。

穏やかといえば穏やかな航海ではあったのだが、徐々に真白な霧に覆われていく視界は、今後の行く末を暗示しているかのようで少し不安にさせられた。

けれどもフェイレイが何でもないような顔で。

「霧に囲まれてる方が見つからなそうだよな。なんか護られてるみたいだし」

穏やかな声でそう言うものだから、何となくそう思えてきたパーティメンバーである。



隠密に行動したいパーティは、ブラッディたちとは別れを告げる。

あまり大人数では目立ちすぎるのと、船長自身が目立つためだ。彼はこの界隈の裏家業の人間たちに、顔が知られすぎている。

「くれぐれもリディル様を頼んだぞ。北以外に行くんだったら、俺が共についていってやるからな。そんときはすぐに連絡よこせよ。リディル様、絶対にフェイレイから離れませんように。いいですね?」

ブラッディはフェイレイとリディルにしつこいくらいにそう言い聞かせると、4人を船から降ろした。

「星府軍の情報が入ったら、連絡くれるって」

「それは助かりますね」

海賊たちには独自の情報入手ルートがあるらしいから、その辺りは頼りになりそうだ。

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