Faylay~しあわせの魔法
船着場からターミナルビルへ入り、入国審査を受ける。

ここにあるゲートをくぐるだけで、IDがチェックされて審査は終わるはずだ。

「ちょっとドキドキいたしますね」

豊満な胸を両手で押さえるローズマリーは、緊張というよりワクワクしているような感がある。

「……まさか、楽しんでませんよね? 陛……ローズさん」

ヴァンガードの視線に、ローズマリーは笑顔で首を振った。

「まさかまさか、そんなことありませんわよ。うふふふふ」

(楽しそうだよ)

フェイレイは苦笑する。

つくづく変わった皇后陛下だな、と思いながら、人の流れに従ってゲートをくぐる。特に何の咎めもなく、あっさりと通り抜けた。

「父さん、やるぅ」

偽のIDを作った父に感謝しながら歩いていくと。

その先に紺色の制服を着た兵士が2人ほど、道行く人々の足を止めていた。

「……検問、みたいですわね?」

「でも、星府軍じゃない。アライエルの軍服だ。……なんとかなるかな」

人の流れに逆らわないよう、努めて平静を装いながら兵士の前まで来る。

「すまんが、顔をよく見せてくれ。それから、名前と入国目的を」

兵士は4人の顔をザッと眺め、先程のゲートから送られてきたデータの映し出されたタブレットと、フェイレイたちの言う名前を確認する。

「ふむ、兄弟で旅を。観光、ではなさそうだが?」

フェイレイの腰の後ろの剣の鞘、ヴァンガードの腿にあるホルスターに視線が向けられる。どちらもギルド仕様だ。

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