Faylay~しあわせの魔法
ターミナルを出て、海風に吹かれて緩やかに動く霧の中を歩いていく。

霧に隠れてはいるが、真っ直ぐに伸びる道路の両脇に、煉瓦造りの高い建物が連なっている。その下を大勢の町人や旅行客が行き交う。

その流れに乗って、フェイレイたちも歩く。

「ヴァン、お前やっぱ天才だよなー。咄嗟にあんな言い訳が出来るなんて」

「……昨日から考えていたんですよ。星府から手配書が出ているかもしれませんからね。そうすると検問くらいやってるでしょう」

「そっか、そうだよな!」

「まあ、ホント、そうですわね」

フェイレイもローズマリーも感心したようにそう言うので、ヴァンガードは「やっぱり僕がしっかりしなくちゃ!」と決意を新たにするのであった。

フェイレイは馬鹿で、ローズマリーは世間知らずなのだ。リディルは……よく分からないけれど。

そのリディルにローズマリーのような巻き毛の、ブロンドのウィッグを被せたのもヴァンガードだ。

リディルの顔を凝視させないための涙もうまくいった。

「お姫様方を護るのが、僕の使命ですから」

祖父の意志を受け継いだつもりのヴァンガードは、キリッとした顔でそう呟く。

「まあ、それは私も含まれているのかしら」

「もちろんです、陛……ローズさん」

「まあ、ありがとう」

ローズマリーはヴァンガードをギュッと抱きしめた。ヴァンガードは声にならない叫び声を上げる。

また柔らかなものの間に顔を突っ込むことになったからだ。

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