Faylay~しあわせの魔法
ローズマリーに抱きしめられ、ジタバタと暴れるヴァンガードを見てフェイレイは笑う。

「あははは、ヴァン、羨ましいなー」

そう言いながら、もちろん脳内では、ちょっとだけ微笑みを浮かべたリディルに、ぎゅう~っと抱きしめられている幸せな映像が浮かび上がっているのだが。

隣を歩くリディルは、ブロンドの巻き毛を揺らしながらサクサク歩いていってしまう。

「あれ、リディル?」

いつもより歩調の速いリディルを、慌てて追いかける。

「どうした? ……あれ、なんか怒ってる?」

「……別に」

「あれ? でも」

無表情だけれども、フェイレイにはリディルの感情が読める。しかし、怒る要素がどこにあったかも分からないので、そこは流すことにする。

スタスタと歩くリディルの、ふわふわと靡くブロンドの巻き毛を目に留める。

「御伽噺のお姫様みたいだよね」

「え?」

「くるくる金髪でさ」

「ああ……」

リディルは歩調を緩め、ウィッグに指を滑らせる。造りもののわりには、さらさらと指通りが良い。

「いや、金髪がじゃなくて、リディルがお姫様みたいなんだけどね。色白でかわいくて、清楚な感じが護ってあげたくなるっていうか」

「……」

リディルはチラ、と視線をフェイレイへ向けた。屈託のない笑顔が、そこにはある。
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