Faylay~しあわせの魔法
「気にしないで。いつもの妄想だから」

呆けていると、リディルに声をかけられた。

「え、妄想ですか?」

「そう。ときどきこっちにいなくなるけど、気にしなくていいよ」

「こっち?」

「現実」

「ああ、そっちですか」

2人が会話している間に、フェイレイは戻ってきた。

「ごめん、よそ見しちゃった」

「かわいい子でもいた?」

そうリディルが言うと、フェイレイはブンブンと首を振った。

「え、違! かわいい水着だよ。リディルが着たらかわいいだろうなって……あわわわわ」

フェイレイは慌てて口を塞ぐと、後ろ向きによろよろ歩き出し、そしてまた同じ店に突っ込んだ。

謝って、果物を拾い集めて、と先程と同じことを繰り返すフェイレイを、遠くから見守るリディルとヴァンガード。

少し待っていると、すぐにフェイレイは戻ってきた。

「ごめん、ごめん。さあ、行こうか!」

少しだけ顔を赤くしながら、フェイレイは歩き出す。それにヴァンガードはついていった。

「あの」

「うん、何?」

「ちょっとした疑問なんですが」

ヴァンガードはにこりと笑みを浮かべると、純朴な少年のように目を輝かせて質問した。
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