Faylay~しあわせの魔法
煉瓦敷きの歩道は緩やかな坂道で、そこをゆっくりと歩いていくと、横から海風が吹いてきた。

ふわりと霧が動いて、隙間から青空が覗く。

「お、晴れるのかな?」

連なる建物の間から、波の穏やかな海も見える。

「晴れたら景色も良さそうですわね」

薄く見え始めた青空の下を、白い鳥が高く鳴きながら飛んでいくのを目で追いながら、ローズマリーは目を細めた。

これがただの観光なら、徐々に晴れていく霧の街並を心から楽しめただろうに。

顔には笑顔を浮かべながらも、どこか心の奥に重い錘を乗せながら、ひんやりと肌を滑っていく霧の残骸を名残惜しそうに見送る。

彷徨う視線を敏感に察知するフェイレイは、うーん、と頭を掻いた。

「なんとかしないとなー……」

恋心には鈍感だが、周囲の不安や恐れを察知することにかけては敏感な彼である。

何か仲間たちの気分を明るくするような出来事はないだろうか、と思案しながら歩く。

霧も大分晴れ、町人や観光客たちの顔も晴れやかになっていく広い通り道。

「これからどうしますか? とりあえずの目的地は王都ヴァルトですが……ここからだと、徒歩で10日ほどです。次の町まで足を進めるか、それともこの町で一泊して身体を休めるか──」

ヴァンガードがこれからの予定について、フェイレイたちに伺いを立てていると、前方に人だかりが出来ていた。

「何だろう?」

首を傾げながら、そこに吸い寄せられるように足を向ける。

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