Faylay~しあわせの魔法
「フェイレイさん、このお婆さんと結婚するんですか……」

「……頑張ってね」

次いで駆けつけてきたヴァンガード、そしてリディルにまでそんなことを言われ、フェイレイは泣きたい気分になってきた。

「もう~、やめろよ~!」

俺はリディルと結婚するんだ、と叫びかけたところに、老婆のヒャッヒャッと奇妙な笑い声が響いてきた。

「お主ら、何を寝ぼけたことを言っておるんじゃ。ワシはそれでも構わんが──」

ニヤリとたわんだ瞳を向けられて、フェイレイはブンブンと首を振った。

「お前さんも失礼なヤツじゃな。老い先短いババに、ちょっとくらい夢を見せてもよかろうに」

「あ、ごめんなさい」

素直に謝るフェイレイに、老婆は大きな目を更に大きく見開いた後、くふくふと笑い出した。

「……まあいい。運命の人というのはな。ワシの最後の占いを授ける人のことじゃ」

「占い? ……バアちゃん、占い出来んの?」

「この国一番の占師じゃ!」

老婆は自信満々に胸を張ったが、隣で少女がボソリと、

「自称です」

と囁いていた。

フェイレイは少し思案する。

この老婆は自称でもなんでも、占師なわけだ。見たところ、孫娘らしき少女も同じような恰好だし、この子も占師なのではないだろうか……。

セルティアでも占師の館は人気だった。

占師のいる暗い色の大きなテントは、いつも若者の姿で溢れていた。その大多数が女性だが。

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