Faylay~しあわせの魔法
老婆の家は港や街から離れた、小高い丘の上にあった。
半日ほど歩いてすっかり陽が高くなると、だいぶ霧も薄れてきた。青々とした短い草の上をさあっと流れていく霧を見ていると、まるで雲の中を歩いているようだ。
薄らぐ霧の向こうには、輝く北の海が見える。
晴れ渡っていた方が見晴らしは良いのだろうが、これはこれで風情がある。
「さあ、ここじゃよ」
老婆が指し示したのは、遊牧民の住処のような白くてまあるいドーム型のテントで、老婆は少女とともにその中へと入っていく。
「少し狭いがね。お前さんたち、すまーとじゃから、問題なかろう」
入り口でおいでおいでと手招かれ、一同は物珍しげに辺りを眺めながらテントの中へと入っていった。
その手前で、リディルは立ち止まる。
ゴトン、ゴトンと、どこからか懐かしい音がしたのだ。
テントから少し離れ、ゆっくりと動いていく白い霧の向こうに見える、丘の下の集落に目をやる。
ポツポツと、木造の小さな建物が見えた。
小さな川のすぐ傍に建つそれは、大きな水車をゆっくりと回している。
ゴトン、ゴトン……。
風に揺れる草の音に混じって微かに聞こえてくるそれは、どこか懐かしい音がする。
耳の奥に、心の奥底に語りかける、優しい音がする。
「リディル?」
老婆の家に入ってこないリディルを心配して、フェイレイが出てきた。
半日ほど歩いてすっかり陽が高くなると、だいぶ霧も薄れてきた。青々とした短い草の上をさあっと流れていく霧を見ていると、まるで雲の中を歩いているようだ。
薄らぐ霧の向こうには、輝く北の海が見える。
晴れ渡っていた方が見晴らしは良いのだろうが、これはこれで風情がある。
「さあ、ここじゃよ」
老婆が指し示したのは、遊牧民の住処のような白くてまあるいドーム型のテントで、老婆は少女とともにその中へと入っていく。
「少し狭いがね。お前さんたち、すまーとじゃから、問題なかろう」
入り口でおいでおいでと手招かれ、一同は物珍しげに辺りを眺めながらテントの中へと入っていった。
その手前で、リディルは立ち止まる。
ゴトン、ゴトンと、どこからか懐かしい音がしたのだ。
テントから少し離れ、ゆっくりと動いていく白い霧の向こうに見える、丘の下の集落に目をやる。
ポツポツと、木造の小さな建物が見えた。
小さな川のすぐ傍に建つそれは、大きな水車をゆっくりと回している。
ゴトン、ゴトン……。
風に揺れる草の音に混じって微かに聞こえてくるそれは、どこか懐かしい音がする。
耳の奥に、心の奥底に語りかける、優しい音がする。
「リディル?」
老婆の家に入ってこないリディルを心配して、フェイレイが出てきた。