Faylay~しあわせの魔法
「苦しい? 痛い?」

心配そうに訊くフェイレイに、リディルはふるふると頭を振った。

「わからない。……胸が、いっぱい」

手の甲で涙を拭っても拭っても、まだ涙は溢れてくる。胸の中でいっぱいになった想いが、次から次へと溢れてくる。

「ごめん……とまらない」

震えるか細い声。

フェイレイはしばらく困惑顔でリディルを見守っていたが、意を決して彼女を抱きしめた。

今のリディルは一人で立つことも出来なさそうなくらい、小さく弱々しく見えたから。

小さな頭に手を添えて、背中をぽんぽんと、優しく叩く。

「いいよ。落ち着くまで、待ってるから」

出来るだけ優しい声で、耳元で囁く。

その優しさが、後頭部に、首に、肩に、背中に、ぬくもりとなって伝わっていく。

決して強くはない抱擁なのに、しっかりと支えられ、包み込まれているような安堵感に、更に涙が流れる。

「……ごめんね」

嗚咽交じりにそう言うと、フェイレイは笑みを零した。

「またー。ごめんじゃないだろ。俺、謝られるより、お礼言われるのが好き」

とん、とん、と背中を叩かれ、リディルにも笑みが広がる。

「ごめ……ありがと」

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