Faylay~しあわせの魔法
随分占師の家に長居をしてしまったせいで、橙に揺れる太陽は地平線の真上へと移動してしまっていた。

そうしたらナミが、今から街へ戻っても宿は取れないだろう、泊まって行けと言ってくれて、パーティはその言葉に甘えることにした。

とは言っても、ナミの家は狭いので、フェイレイとヴァンガードはその隣に簡易テントを張って寝床を作り、リディルとローズマリーだけ家の中に泊めてもらうことにした。

ハルカが作ってくれた温かい料理をいただき、ナミが知っている『勇者伝説』について聞いたりして、夜は更けていった。



『勇者』はこのアライエルを築いた王の騎士で、魔族、精霊を巻き込んだ何十年にも及ぶ大戦を収束させ、“万物の力”を持っていた『姫』を、『哀しみの塔』から救い出した偉大なる人物である──。

セルティアに住むフェイレイには知り得なかった、この土地ならではの『勇者』の姿が浮かび上がってくる。

世界を巻き込むような大戦は何故起きたのか。

『勇者』と『姫』がどのような関係だったのか。

姫の“万物の力”がなんなのか。

『哀しみの塔』が本当に人の手によって造られた物なのか──誰も上れないような塔など、本当に人の手によって造れるものなのか。

謎はいくつかあるのだけれども。

その辺りは長い年月が、いくつかの事実を面白おかしく物語風に変えてしまったのだろうと、ナミは笑った。

彼女にとって大事なのは、世界を救った偉大なる『勇者』に、先祖が占いを授けたという事実なのである。

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