Faylay~しあわせの魔法
「バアちゃんのご先祖様は、勇者になんて言ったの?」

フェイレイの問いに、ナミは葡萄酒を傾けながら、赤い顔で言った。

「そんなこたぁ知らん!」

「えええ~?」

「もう千年も昔の話じゃ。話も風化してしまっておるわ」

ヒャヒャヒャと楽しそうに笑うナミに、フェイレイは不満顔。

「なんだー。勇者を目指すヒントにしようと思ったのに」

「心配するなぁ。ワシの占いでは、お前さんは明日にでも勇者じゃ! 世界を救う、偉大なる人物よ! そしてワシは、偉大なる占師じゃあ~!」

「もう、おばあちゃんたら!」

グラスを持ってフラフラになっているナミを、ハルカが支える。

「もう寝ましょう? 皆さんすみません、ご迷惑をおかけして。ほら、おばあちゃん!」

ハルカに連れられて、ナミは奥の寝所へと引き上げていく。

「私たちもそろそろお開きにしましょうか」

「うん」

立ち上がり、辺りを見回して、リディルの姿がないことに気づいた。

「あれっ?」

ヴァンガードの姿もない。

キョロキョロと首を動かしていると、ローズマリーが教えてくれた。

「リディルならさっき外に出て行きましたよ。その後、ヴァンくんが追いかけていったようですけれど」

「え、気づかなかった」

「貴方、おばあさんに掴まっていましたものね」

< 384 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop