Faylay~しあわせの魔法
「占いってさ、必ず“そう”なるものじゃないんだってさ」

また両手を後ろについて、フェイレイは月明かりで弱められた星たちの瞬きを見上げる。

「けど、“言霊”っていうの? その人の望むような、明るい未来を口にしてやることで、少しの力を与えてやるんだって。望む未来へ自分の足で歩いて行けるように、ほんの少し背中を押してやるんだってさ。バアちゃんが言ってた」

「……ふうん」

リディルは少し驚いた。

ハルカには占師としての能力を感じたが、ナミにはまったく感じなかった。

けれど、彼女は彼女なりに、微かな光の道標を人々に与えていたのだ。

「言霊……か」

リディルはぽつりと呟いて、小さな鳴き声の聞こえてくる、暗い草の上を見つめた。

それからフェイレイをチラと見やり、彼と目が合うとパッと顔を逸らした。

首を傾げるフェイレイと、視線を合わせてはすぐに逸らすということを何度か繰り返し、

「リディル? どうし──」

フェイレイが疑問を投げかけたところで、すくっと立ち上がった。

「ん?」

どこに行くのかと、背後に回るリディルを振り返ると、

「前、向いて」

と、厳しい口調で言われた。

「なに?」

訝しがりながらも、言われた通りに前を向くと、とん、と背中に軽い衝撃があった。そして首に腕が回され、ぎゅっと、抱きしめられた。

「……え?」

フェイレイは前を向いたまま固まった。
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