Faylay~しあわせの魔法
耳をくすぐる金のふわふわした髪は偽者だけれど、フェイレイをぎゅっと抱きしめている細い腕は──間違いなくリディルのものだ。

「な……ななななな、な、なに?」

何が起きたのか分からなくて、うまく言葉が出てこない。背中にピタリとくっついた身体から伝わってくるぬくもりに、全神経が向けられる。

しばらく虫たちのかわいらしい鳴き声だけが響いていたが、やがてリディルが口を開いた。

「……大丈夫」

「え?」

「絶対に、大丈夫」

リディルの腕に、少しだけ力が篭る。

「父さんも、母さんも、絶対に大丈夫」

そう言われて、フェイレイの胸がどくりと音を立てた。

「フェイは優しい人だよ。自分も不安なのに、他の人のことばっかり心配してる。……今日も、頑張ったね」

「……がんば、った?」

「頑張って、笑ってた。みんなを元気にしてた。……だからフェイの大切な人、神様は連れて行かない。……行かない、よ」

耳元からリディルの懸命な想いが伝わってきて、フェイレイは喉をジリジリと痛むのを感じた。

優しさが、胸に染みる。

「……ありがとう。俺もそう、信じてる」

そう言ってなんとか笑顔を作る。

草の上から手を持ち上げ、首に回されたリディルの手に触れようとして──躊躇って。また触れようとして、と何度も宙を彷徨わせた。

「え、えと。これは、その~……」

胸の中に隠したつもりの両親への不安を言い当てるだけなら、こんな風に……抱きつく必要はないような気もするのだが。

何故リディルがこんな行動を取ったのか、顔が赤くなるのを感じながら、訊ねてみた。
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