Faylay~しあわせの魔法
「……昼間のお礼だよ」

リディルもまた、フェイレイの肩に押し付けた頬を赤くしながら答える。

「そ、そう」

鼓膜をくすぐるかわいい声に、ますます顔が熱くなるのを感じた。

昼間、ぽろぽろと涙を零していたリディルをどうにか慰めたくて抱きしめたことが、こんな風に返ってくるなんて思いもしなかった。

父や母を心配する気持ちが薄らいだわけではないのだが、今は背中のぬくもりと、耳元にかかる金の髪が気になって仕方ない。

「えっと……ありがとな」

「うん」

「ありがと」

「うん」

お礼を言いながら、細くて白い手に触れることの出来ないフェイレイの手が、上に下に揺れ動いている。

この腕を振り解いて、自分の方から、正面から抱きしめたいような気もするのだが。

(いいや)

今は、背中のぬくもりがいい。

(なんか、しあわせ)

自分の身を案じてくれる、リディルの気持ちが嬉しかった。



りぃ、りぃ。

草の中で奏でられる虫たちの声が、優しく2人を包み込む……。






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