Faylay~しあわせの魔法
フェイレイの、そしてリディルの瞳が僅かに見開かれた。

「あんた──あのときの」

言いながらナミに近づいていくと、彼女の表情が徐々に変わってきた。

鋭い眼光を放つ瞳は和らぎ、人の良さそうな皺を刻んだ、朗らかな笑みが広がる。

「ほ? なんじゃなんじゃ、また戻ってきおって。忘れ物か?」

「え……バアちゃん?」

「なんじゃ、呆けた顔をしおって。……ん? なんじゃ、ハルカまで」

「おばあちゃん……今の御告げみたいなの……何?」

ハルカの問いに、ナミは首を傾げる。

「何わけ分からんことを言っとるんじゃ。ほれ、笑顔で手を振れぃ」

「おばあちゃん……」

戸惑うハルカの手を掴み、ナミは手を振らせる。

にこやかなその姿からは、先程の研ぎ澄まされた雰囲気を感じない。今自分で喋ったことを、まるで覚えていないかのような笑みを向けられる。

疑問を持ちながらもフェイレイは手を振り返し、背を向けてまた歩き出す。

「あの声……」

「声が、どうしたのです?」

「……10年前に、リディルを俺に預けた人の声だ」

「えっ!? でも……」

ヴァンガードは振り返り、ナミの姿を確認する。

「ナミさんはアライエルを出たことがないとおっしゃっていましたよ?」

「うん……たぶん、バアちゃんじゃない。バアちゃんに乗り移った、誰か、だ……」
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