Faylay~しあわせの魔法
その誰か、とは誰なのか。

首を捻っていると、リディルが口を開いた。

「私も……あの声、知ってる……」

「え、知ってる!? 誰!?」

「……分からない。でも……どこかで……」

リディルはこめかみを押さえた。軽く頭痛がしている。深く閉ざされた記憶の中に、答えが眠っているらしい。

「無理しないでいいよ。こういうことって、分かるときが来たら分かるんだ、きっと」

痛みに顔をしかめるリディルを気遣い、フェイレイは明るくそう言う。

「まあ、そうですわね。良く分かりませんけれど、今はあの声の主が言ったことを心に留めて……前に進むしかありませんわ」

「そうですね」

ローズマリー、ヴァンガードも頷く。




迷うな。

いかなるときも、己を見失うな。




その言葉が誰のもので、どんな意味を持っていたのかは、遠くない未来に知ることとなる。

そう、遠くない未来。

世界の命運を握る、最後の戦いの最中に……。




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