Faylay~しあわせの魔法
船長は鬼だ、などと言いながらも、セルティア近海にいる仲間に通信が送られる。

「隠しててもいずれ、ヤツラにはバレる。……どうするかな」

ブラッディは穏やかな海を眺め、重い溜息をついた。

彼にはセルティア以外にも、頭を悩ませていることがあった。

皇都へ密かに差し向けていた仲間からの連絡が、ぱたりと途絶えてしまっていたのだ。おまけに、近隣の街やギルド本部への連絡もまったくつかなくなっている。

カインのいる皇都の状況がまったく掴めない。

「魔族の巣窟になっているって噂は、本当かもしれねぇな」

数週間前まではなんの問題もなく渡れていた中央大陸には、最近では信じられないほど多くの魔族が出没し、迂闊に近づけなくなっている。

それの意味するところは、魔族討伐を生業とするギルドが機能していない、ということだ。

南や西と同じように壊滅させられたのだろうか。皇都を護るはずのギルドがまさか、とは思うが、確認のしようがない。

「カイン様……一体、アンタの身に何が起きてるってんだよ……」

理知的で優しい瞳をしたかつての主の姿を思い浮かべ、更に溜息が零れた。




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