Faylay~しあわせの魔法
少しの休憩を挟みながら、走っては戦い、走っては戦いを繰り返しているうちに、嫌でも疲労が蓄積されていった。

ヴァンガードの放った弾は、フェイレイの足元ギリギリを掠め、これには少し危険を感じたフェイレイが、この日初めて腰の後ろから剣を引き抜いて、自ら魔族を斬り倒した。

「命中率70パーセント。落ちてきてますわよ。大丈夫ですか?」

ヴァンガードの後ろで魔族を殴り倒したローズマリーは、息を乱すことなく、淡々と聞いた。

「……はい」

構える腕を震わせながら、ヴァンガードは頷いたものの、これ以上は駄目だと思った。

「どんな状況でも正確に撃てなければ、前衛で戦う者の足を引っ張ります。あと5パーセント命中率が下がったらお休みなさい。フェイレイくんでも避けきれなくなります」

「……はい」

唇を噛みしめるヴァンガードの頭に、ローズマリーの手がそっと乗せられる。

「精霊の力が得られなくなる状況が考えられる今、貴方が精霊士でなくて良かったと心から思います」

にこりと微笑むローズマリーの顔を、ヴァンガードは呆けたように見つめる。

「そうか……そうですよね」

精霊士になれなかったことを、この10年悔やみ続けてきたけれど……それが今は、その方が良かったのだと、その方が役に立てるのだと思える状況にあるのだ。

「頑張ります。ちゃんと、お護りできるように……」

「ええ。頼りにしていますわ」

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