Faylay~しあわせの魔法
街から山中へ続く道を歩き、海を望める中腹まで上ってくると、木々が伐採され、開けた場所に重機が置いてあるところに出た。

その向こうにある坑道へ下りる立坑の前でガイドが立ち止まったので、フェイレイはその暗くて深い穴を覗いてみた。

「真っ暗で何も見えないですね」

「ええ、30メートルほどあります。ここから本坑に下りられます。正規のルートは、何者かに潰されてしまっていて……入り口はここしか残っていないのです」

「大丈夫です。梯子ついてるし」

試しに梯子に足をかけ、身体半分ほど下りてみる。造りがしっかりしているので、危険はなさそうだ。

「リディルはここでガイドさんと待機。ヴァンは……どうする? ちょっと危険かもしれないけど……」

「もちろん行きますよ。そのためについてきたんですから」

にこりと微笑んで、ヴァンガードはフェイレイに続こうと立坑の前に立つ。

「フェイ、何がいるか分からない。今回は私も……」

町長やガイドの話を聞いて、今までよりも危険なものが潜んでいるかもしれないと、リディルは心配になっていた。

「大丈夫。リディルに怪我させたら母さんに怒られるし。いつもみたいにサポートお願い」

「……あまり離れると、状況が分からなくなる。ここは視界を遮られるから」

前の任務のときのように、広大な森林を臨める様なところにいるのなら、精霊たちの力で状況を把握できた。

けれども、この先は地中だ。

リディルの力が及ばなくなる。
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