Faylay~しあわせの魔法
ローズマリーはヴァンガードに微笑んだ後、疲労の激しい様子のリディルに手を貸そうとしているフェイレイを見とめ、

「フェイレイくん!」

良く通る声で呼び止めた。

「リディルに手を貸すのは禁止です。いいですね」

「ええ? でも……」

「そうやって甘やかすから成長しないのですわ。……まあ、その分、貴方が成長したのでしょうけれど。でも何が出てくるのか分からないのですから、ちゃんとリディルにも自己防衛できるくらいの体力はつけさせなさい」

「甘やかしたつもりは……ないけど」

チラ、とリディルを見ると、彼女もこくり、と頷いていた。真っ赤というよりは、青ざめた顔色で心配なのだけれども。

そのリディルに、ローズマリーが近づく。

「足手まといにはなりたくないのでしょう?」

「うん」

「精霊たちがいなくとも、貴女は女王を召喚出来る。けれど、実戦で役に立たなくては意味がないの。戦闘が終わるまで立っていられるようにしないと」

「わかってる」

大きく息を吐き出した後、リディルは頬を伝い落ちていく汗を拭い、走る準備をする。

それからまた全員走り出し、もう一度魔族に遭遇して、そこで2人とももう限界だと判断され、野営することになった。

街道から少しはずれた木立に囲まれた開けた場所にテントを張り、缶詰の簡単な夕飯を済ませると、クタクタに疲れているリディルとヴァンガードをテントに残し、ローズマリーはフェイレイを誘った。

「私も貴方も、あれくらいでは訓練したとは言えません。これから手合わせいたしましょう」
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