Faylay~しあわせの魔法
「そのときはこれで」

フェイレイは耳につけたインカムにスイッチを入れた。

それでもリディルは不安そうな顔をしているので、フェイレイは笑ってみせる。

「大丈夫。今回は調査だけだし」

力強くそう断言されると、リディルは何も言えなくなる。

「……なるべく、細かく状況を説明して」

「了解!」

フェイレイは元気よく手を振ると、立坑をするすると下りていった。ヴァンガードはリディルに頭を下げてから、それに続く。



梯子を一段下りるごとに、空気が変わった。

南国独特の太陽と海の温かい香りは薄れ、ひやりとした土の匂いに満たされていく。

「灯りは全部消えちゃってるんだな。真っ暗で全然見えない」

「点けましょうか?」

上からそう声がして、しばらくするとボボっと赤い火が辺りに揺らめいた。

「ティナ?」

「はい、このくらいなら、僕でも召びだせますから」

ふわふわと周りを飛ぶいくつかの炎の上に、燃え上がるドレスを纏った、つり目の少女たちが座っている。

「精霊召びだせるヤツって凄いよなー。なんで出来るんだろ」

《お前、バカだから》

《バカだから》

ティナたちはフェイレイに向かって悪戯っぽい笑みで語りかけた。

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