Faylay~しあわせの魔法
パチン、と火が爆ぜ、ガラガラと薪が崩れる音がした。はっと我に返ったリディルは、パッとフェイレイから離れる。

「……そのままだと冷えるから、ブランケット、持ってくるね」

立ち上がり、小走りでテントへ消えてしまったリディルに、フェイレイは大きく溜息をついた。

「逃げられた……」

頭を抱えて、もうひとつ溜息。

けれど、自分たちの中で何かが変わろうとしているのは分かった。

幼馴染とか、兄妹のような関係とか、そういうものが変わろうとしている。もう夢のような妄想だけでは満足出来ない。

現実が、欲しい。

くしゃ、と赤い髪をかき上げて、顔を上げる。強い意志を秘めた深海色の瞳を、濃紺の夜空へと向けた。




テントに駆け込んだリディルもまた、溜息をついていた。

逃げなくても良かった。

逃げなかったらきっと、フェイレイは受け止めてくれていた。そう、分かっているのに──。

「……壊れそう」

苦しいくらいに鳴り響く胸を押さえ、また小さく息をついた。


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