Faylay~しあわせの魔法
次の日も朝から街道を駆け抜け、旅人を襲う魔族を倒しながら東へと進んでいった。

夜になりテントを張って、またフェイレイとローズマリーは訓練をしに林の奥へと消えていく。

それを見送っていると、ヴァンガードが気合いを入れて辺りを警戒しだした。

「昨日はすみませんでした! 今日は絶対、お一人にしたりしませんから!」

気が付かないうちに眠ってしまったヴァンガードは、朝からそう言って気を張っていた。

「一人にはされてないよ」

「先に寝てしまったら同じことです!」

キビキビと歩き、何もいないことを確認してから、リディルの隣の切り株へと腰を下ろす。

「フェイレイさんやローズさんが戻ってくるまで、ちゃんと起きてますから」

魔銃を手に、真面目な顔でそう言うヴァンガードに、リディルは小さく微笑む。

「真面目だね、ヴァンは」

そう言って、人差し指をふわりと上へ向ける。

「ウィスカ」

ぽたん、と水音が響いて、テントの周りを水の気配が覆い尽くした。ヴァンガードは目を丸くして辺りを見回す。

「水の檻……?」

ユラユラと広がる水の壁は、ドーム状に辺りを覆い尽くしていた。

「うん。あのね……ちょっと試したいことがあるの。ヴァン、付き合ってくれる?」

揺らめく水の壁は、焚き火の明るい橙色に染まり、夕方の海のように煌いている。その光が反射して、リディルとヴァンガードの肌の上にも、光が滑っていく。

「はい、僕でよろしければ。あ、あの、僕もご相談したいことが」

「うん、聞くよ」

フェイレイたちに追いつきたい2人もまた、秘密の特訓を重ねる。

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