Faylay~しあわせの魔法
それから5日目。
フェイレイたちは王都ヴァルトの手前にある、ザズという街に入った。
高い山脈に囲まれ、ひやりと冷たい霧に包まれた静かな街だ。
昨晩はこの街の外れにある、古ぼけた宿屋に泊まった。
娯楽設備も何もない、ランプの明かりだけが狭い室内をぼんやりと照らす、本当に質素な宿ではあったが、ずっとテントで野営してきたパーティにとっては、ベッドでのびのびと手足を伸ばして寝られるだけありがたい。
一夜明け、昇り始めた太陽の光が街を覆い尽くすミルク色の朝靄の中をゆらゆらと泳ぐ、静かな朝が訪れた。
ミルクとパンを配る配達員の足音さえ、霧に包み込まれてしまうような、静かな朝。
……の、はずだった。
「やったあああああ~!」
宿屋の一室から、朝靄を吹き飛ばす勢いの大声が響き渡った。
「な、何事ですか!」
いきなり夢の中から現に引き戻されたヴァンガードは、それでも枕元に忍ばせておいた魔銃を手にし、ベッドから跳ね起きた。
覚めやらぬ眼で、しっかり大声の主に照準を合わせるあたり、彼の銃の腕が知れる。
ヴァンガードが銃の照準を合わせた先には、燃えるような赤い髪に寝癖をつけたまま、ベッドの上でピョンピョン飛び上がるフェイレイがいた。
フェイレイはヴァンガードが目覚めたことに気付くと、自分のベッドから勢い良く飛び降りた。
フェイレイたちは王都ヴァルトの手前にある、ザズという街に入った。
高い山脈に囲まれ、ひやりと冷たい霧に包まれた静かな街だ。
昨晩はこの街の外れにある、古ぼけた宿屋に泊まった。
娯楽設備も何もない、ランプの明かりだけが狭い室内をぼんやりと照らす、本当に質素な宿ではあったが、ずっとテントで野営してきたパーティにとっては、ベッドでのびのびと手足を伸ばして寝られるだけありがたい。
一夜明け、昇り始めた太陽の光が街を覆い尽くすミルク色の朝靄の中をゆらゆらと泳ぐ、静かな朝が訪れた。
ミルクとパンを配る配達員の足音さえ、霧に包み込まれてしまうような、静かな朝。
……の、はずだった。
「やったあああああ~!」
宿屋の一室から、朝靄を吹き飛ばす勢いの大声が響き渡った。
「な、何事ですか!」
いきなり夢の中から現に引き戻されたヴァンガードは、それでも枕元に忍ばせておいた魔銃を手にし、ベッドから跳ね起きた。
覚めやらぬ眼で、しっかり大声の主に照準を合わせるあたり、彼の銃の腕が知れる。
ヴァンガードが銃の照準を合わせた先には、燃えるような赤い髪に寝癖をつけたまま、ベッドの上でピョンピョン飛び上がるフェイレイがいた。
フェイレイはヴァンガードが目覚めたことに気付くと、自分のベッドから勢い良く飛び降りた。