Faylay~しあわせの魔法
「ヴァン、やった、やったぞ! ついに俺にも来たんだ!」

深海のように落ち着いた青い瞳をキラキラと輝かせ、フェイレイはヴァンガードに飛びつく。そして彼の細い肩に手を置くと、ガックガックと体を揺さぶり始めた。

「な、何がです?」

あまりにも激しい揺れに、ヴァンガードの声がか細く裏返る。

その問いかけに、フェイレイは更に表情を輝かせ、言った。

「関節の痛みが!!」



小さな宿屋の狭い部屋の中に、一瞬だけ沈黙が訪れた。が、それもほんの一瞬、瞬きするよりも短い間のこと。

「なんか痛いんだ。膝なんか特に~! な、いいだろ? ヴァンにはまだ分かんないよな、この嬉しさが!」

すぐにフェイレイが騒ぎ出した。

ヴァンガードは目を細め、ポカンと口を開けたまま熱く語るフェイレイを見守る。

「この日をどんなに待ち望んだことか! チビだチビだと言われ続けて17年……やっと俺にも成長の兆しが見えてきた!」

「ああ……成長痛のことですか……」

やっと話が見えたヴァンガードは、静かに溜息をつくと、自分より5つも年上の『コドモ』を見上げた。

「それは良かったですね。赤飯でも炊きましょうか?」

まだ眠っていても良かった時間なのに、叩き起こされて苛ついたので、軽く嫌味のつもりでそう言ったのだが、フェイレイは爽やかに微笑んだ。

「俺、赤飯よりも骨付き肉がいいな! すっげえデカいの!」

屈託のない無邪気な笑顔に、ヴァンガードは一瞬言葉を失った。

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