Faylay~しあわせの魔法
「……貴方の身長が伸びないのは、きっと脳まで筋肉で出来ているからですよ」
ボソリと呟いた毒は、フェイレイにはまったく聞こえていないようだ。
「リディル、起きたかな。報告してくるなっ」
スキップでもしそうな勢いでフェイは部屋を出て行く。
しばらくして。
隣の部屋から女性の怒号と、肉を潰す凄まじい打撃音が聞こえてきて、どたーん、ばたーんと迷惑な音が廊下に響き渡った。
現場を見ていなくとも大体想像がつく。
廊下に出て様子を見に行けば案の定、フェイレイはカエルのような恰好で廊下の壁に張り付いていた。
「……あの。女性の部屋にノックもせずに入るのは、どうかと思いますよ」
見ていなくても分かる。
ノックせずに女性たちの部屋のドアを開け、ローズマリーに叱られたのだ。……叱られたなどという、甘い仕打ちではないような気もするが。
「うう……つい、クセで」
「ついクセでって、貴方……」
ヴァンガードは目を吊り上げた。
「今までリディルさんの部屋、許可なしに突然開けてたってことですか?」
「いや、まあ、うん……」
だって子供の頃同じ家に住んでいて、ギルドの寮も毎日行ったり来たりする仲だったのだ、とフェイレイはカエルの恰好で壁に張り付いたまま説明する。
「今度そんなことしたら、眉間に弾をぶち込みますよ」
皇女殿下護衛係としての任を自分に課しているヴァンガードは、額に青筋を立てながら恐ろしいことを口にした。
ボソリと呟いた毒は、フェイレイにはまったく聞こえていないようだ。
「リディル、起きたかな。報告してくるなっ」
スキップでもしそうな勢いでフェイは部屋を出て行く。
しばらくして。
隣の部屋から女性の怒号と、肉を潰す凄まじい打撃音が聞こえてきて、どたーん、ばたーんと迷惑な音が廊下に響き渡った。
現場を見ていなくとも大体想像がつく。
廊下に出て様子を見に行けば案の定、フェイレイはカエルのような恰好で廊下の壁に張り付いていた。
「……あの。女性の部屋にノックもせずに入るのは、どうかと思いますよ」
見ていなくても分かる。
ノックせずに女性たちの部屋のドアを開け、ローズマリーに叱られたのだ。……叱られたなどという、甘い仕打ちではないような気もするが。
「うう……つい、クセで」
「ついクセでって、貴方……」
ヴァンガードは目を吊り上げた。
「今までリディルさんの部屋、許可なしに突然開けてたってことですか?」
「いや、まあ、うん……」
だって子供の頃同じ家に住んでいて、ギルドの寮も毎日行ったり来たりする仲だったのだ、とフェイレイはカエルの恰好で壁に張り付いたまま説明する。
「今度そんなことしたら、眉間に弾をぶち込みますよ」
皇女殿下護衛係としての任を自分に課しているヴァンガードは、額に青筋を立てながら恐ろしいことを口にした。