Faylay~しあわせの魔法
「フェイレイくんの一番いいところは、素直になんでも吸収するところね」

初日こそ起き上がれないほど打ちのめされたフェイレイだが、次の日からは自分の足で帰ってきていた。怪我も徐々に減ってきている。

「無駄な力の入れ方をしていたから、コントロール出来るようにと思って訓練してきたのだけれど……それはもうすぐ身につきそうよ。ただ、もうひとつ問題があるの。そっちはもう少し、時間がかかりそうね……」

「問題?」

「彼は……感情によって増幅する力に、振り幅がありすぎるわ」

それは脅威だと、彼女は言う。

「誰でも感情で力が増減するものなの。でも彼の場合……予想をはるかに超えてくるわ。力に底がないようにも見えます。飛行艇でリンドブルムを倒したとき、感じたのですけれどね……。あまりにも爆発的に伸びる子は、危険よ」

「それは、どういう風に?」

リディルの問いに、ローズマリーは怖いくらいに真剣な顔で言った。

「感情によって引き出される力は、そのときの心の状態によって左右されるわ。正しい方向へ向いているのなら良いけれど……ときには、破壊の衝動を呼び起こすこともあり得る。……これは貴女にも言えることよ」

「私、にも?」

「そう。……フェイレイくんには、言葉で言っても理解してもらえるか分からないから、訓練を通して徐々に分かってもらうつもり。でも貴女には言葉で言っておくわね」

少しだけ表情を崩し、ローズマリーはリディルの肩に手を置く。

「常に自分を持っていて。周りに流されないで。ナミさん……いえ、あの『声』が忠告していたのは、たぶんこのことではないかと、私は思っているの」


そしてね。

貴方たちは、互いの存在が力を正しい方向へと導いている。高めあい、護りあっている。

だから私は、貴方たちは決して離れてはいけないと思うのよ──。



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