Faylay~しあわせの魔法
リディルも、ローズマリーの言葉の全てを理解したわけではない。

けれど、何となくは分かる。

人にない力を持つことの怖さ。そして人に与える恐怖。

心強くもあり、恐れるものでもある。そういう力を、自分は持っている。ちゃんとコントロール出来るようにすることは重要だ。



リディルはアリアの言葉を思い出した。

『アイツは暴れ馬だ。手綱が必要だな──』

その意味を理解することなく、リディルはフェイレイとパーティを組むように辞令を受けた。

アリアもランスも、フェイレイの未知数で危険な力に気づいていたのだろうか。

フェイレイが『勇者になる!』と喚いていたのと、リディルがフェイレイに一番心を許していたというだけの理由ではなかったのだろうか。

今は確認する術が無い。




全員の食事が終わる頃には、他の部屋の客たちも食堂に集まってきていた。

小さな街の古ぼけた宿屋には、やはり庶民的な恰好の客が多い。

その中に一組だけ、異様に目立つ恰好の者たちがいた。

貴族が纏うような仕立ての良いドレスをまとった少女と、黒のロングジャケットを羽織った、いかにも執事風の初老の男だ。

「お忍びで来た……にしては、目立ちすぎる恰好ですわね」

ローズマリーが不思議がって首を傾げていると、宿の主人がにこやかに近づいてきた。

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