Faylay~しあわせの魔法
「ううっ!」

傷ついた顔で、フェイレイは自分の胸を押さえる。

「あ、あの、フェイレイさんは精霊が見えるのですから、練習すれば、召べるのでは?」

精霊たちは、自分たちが気に入った人間にしか姿を見せず、力も貸さない。人と精霊は共存してはいるものの、そこにはやはり、見えない壁が存在していた。

「あー、リディルにもそう言われたけどー」

精霊たちはフェイレイを慕っている。そういう人間は、精霊を召還出来るはずなのに。

「決定的に知性が足りないんだろうって、母さんには言われた」

「……そうですか」

ヴァンガードは思い切り納得した。


そうして下まで下りると、わりと広い本坑に出た。

地上にあった重機を入れるのだ、余裕を持たせて掘ってあるのだろう。天井は見上げるほどに高い。

本坑を中心に、あちこちに細い道が広がっている。脇に入ると迷子になりそうだ。

「真っ直ぐで……いいみたいだな」

フェイレイはここに下り立った瞬間から、ビリビリと肌に感じるものがあった。この気配は間違いなく、魔族のものだ。

「何か、いますか?」

訊ねるヴァンガードの声も、心なしか小さくなる。

「いる。……なんか、デカいのがいるぞ」
< 42 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop