Faylay~しあわせの魔法
「皆様、いかがでしたか、料理は口に合いましたか?」

「ええ、とてもおいしくいただきました」

「それは何よりです」

主人は朗らかな笑みで頷いた後、その笑みを潜めて小声で話しかけてきた。

「あの、失礼ですが、皆様は都の貴族様ではありませんか?」

ギクリ、と全員の顔が引きつる。

「いえ……何故、そのように?」

「皆様の立ち居振る舞いが、庶民のものとは違ったので……護衛の方もおられますし」

チラ、と主人が視線を向けるのは、フェイレイだ。

「……俺だけ庶民ぽいのか」

フェイレイはちょっと落ち込んだ。庶民に違いは無いけれど、これでも一応、ギルドのお偉いさんの息子なのだが。

そんなフェイレイを尻目に、ローズマリーは宿の主人に話しかける。

「もし仮にそうだとして……どうしたというのですか?」

「違ったらすみません。ですが最近この辺りでは、身分の高い方の誘拐事件が頻発しておりまして」

「誘拐事件?」

4人は声を揃えて聞き返す。

「狙われるのは、皆、美しい淑女ばかりなのです。そのお宅に前もって予告状が届くらしくて」

「まあ」

「それで、お嬢様方のような美しい方々の外出は、お控えくださいますよう、お願いしているところなのです」

「予告状が届かなくとも?」

「はい、念のために」

「そうですか。ありがとうございます、気をつけますわ」

宿の主人はほっとした顔になり、あの派手な客の方に歩いていった。おそらく同じように忠告するつもりなのだ。

< 420 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop