Faylay~しあわせの魔法
──というわけで。

只今、女性たちの部屋でヴァンガード変装中。

シルヴァの着ていたリボンとフリルだらけの、ピンクでかわいらしい、しかも派手なドレスを着せられている。

「き、キツイ、ですよ」

「これが普通です」

背中のリボンをギュウギュウ締め付け、ローズマリーが言った。

「ローズさんもこんな窮屈なドレスを着ていらっしゃったのですか」

「正装のときはね。普段は楽にしてますけれど、公式な場ではこういうタイプのものですよ。いかに腰を細く見せるか、胸を美しく見せるかがポイントです」

ギュウ、と更に絞められ、ヴァンガードは息が詰まりそうだった。

「ヴァンくん、細腰ですのねぇ。嫉妬しそうですわ」

「ま、まだ子どもですから……」

ヴァンガードの声は、本当に苦しそうだった。男の正装がいかに楽であるか、身をもって体験している彼である。

「それ着るの、俺じゃなくて良かった……」

現時点ではまったく役に立たないフェイレイは、ベッドに座ってヴァンガードが変身していくのを大人しく眺めている。

「貴方には無理だったでしょう? 体型を隠すデザインならともかく、背中も腕も見せるタイプですもの」

ふふふ、とローズマリーが笑う。でも手元のリボンを結ぶ手から力が抜けることはなく、ヴァンガードは更に息が詰まった。

それを苦笑しながら眺めていたフェイレイは、ドレッサーの前でジッと何かを見ているリディルに気が付いた。

< 430 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop