Faylay~しあわせの魔法
「リディルに足、治してもらえたらいいんだけどな」

「そんなことしたら敵に怪しく見えてしまいます」

「だよなー。……もう少し歩かないとだ。頑張れそうか?」

「頑張ります」

疲れていても、痛みはあっても、背筋だけはしゃんと伸ばして歩く彼に、プロとしての意地が見えてフェイレイは微笑んだ。

しかし、ふと思う。

隣を歩いている『淑女』が、もしリディルだったらと。

任務でもなんでもなく、美しく着飾った彼女が隣を歩いてくれたら……。

白く淡く光る空間の中に、ふわふわと裾の広がるピンク色のドレスを身に纏ったリディルの姿が浮かび上がる。

(リディル、意外ににかわいいもの好きそうだな)

今までは戦闘しやすいように、髪もおだんごにきゅっと結い上げ、精霊士の制服以外の洋服もシンプルなものが多かった彼女だけれど。

ヴァンガードの着ているドレスを、無表情ながらキラキラとした瞳で眺めていた。

(フリルのリボンとか、あげたら喜ぶかな)

おだんご頭に白くてふわふわしたリボンを結んでやる妄想をして、その中の彼女がかわいらしくはにかんだ。

「……うん、似合う」

へら、と顔を歪ませて、ヴァンガードに腕をぎゅううと掴まれた。

「任務中に変な妄想はやめてくださいよ」

「え、してない、してないから!」

「貴方、すぐ顔に出るんですよ」

ジロリと、水色の瞳に睨まれた。

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