Faylay~しあわせの魔法
リディルにそう言葉を返したところで、フェイレイの張り巡らされたアンテナに何かが引っかかった。

「……魔族の方かな」

どうやら犯人は魔族だ。どこにいても予告状に書かれた時間に現れて攫っていくのだから、そうだろうとは思っていた。

誘拐など人間染みた手を使うのは、同じような知能を持つ人型に限られる。

力はドラゴンなどには到底及ばないものの、ヤツラは頭を使う。その分やっかいだとも言えた。

『犯人はやはり魔族か。では、待機させてあるギルドの傭兵を向かわせる』

シルヴァの声が響く。

「うん、分かった。……真っ直ぐ、こっちに向かってきてるな……」

フェイレイの目付きがスッと鋭くなる。

「……リディル」

『うん』

一瞬の沈黙の後、リディルから答えが返る。

『一体じゃない。……二……三』

「三体?」

『うん』

フェイレイのアンテナには二体しか補足出来ていない。

「どこだ」

ロングジャケットを脱ぎ捨て、その下に隠れていた鞘から剣を引き抜く。瞬間、真横を一陣の風が吹きぬけた。

「っ!!」

「うわあっ」

ヴァンガードの短い悲鳴が、あっという間に遠くへと消え去る。ピンクのドレスは遥か上空へと舞い上がっていた。

「気配なかったぞ」

フェイレイは唇の端を上げると、間近まで迫った気配の方に対応した。

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