Faylay~しあわせの魔法
ヴァンガードは上空50メートルでゴウゴウと風に煽られながら、片方の足首を掴まれて逆さ釣りになっていた。
「ああ、もう! ドレス、邪魔ー!」
バサバサとドレスの裾が顔を覆い、何が起きているのかすら確認することが出来ない。
「ちょっと、静かにおしよ。まったく、公爵家令嬢が聞いて呆れるね。なんだい、その男みたいな声は」
やっとのことでドレスから顔を出すと、そんな声が聞こえてきた。
吹き荒れる風に目を細めながら、声の聞こえてきた方へ目をやる。
まず尖った耳が目に入った。弱い月の明かりに照らされる艶やかな黒髪が風に靡き、そこから覗く白い横顔は、女人のものだった。
背中に硬質そうな黒い翼を持ち、限りなく“無い”に等しい布地の少ない黒い衣装を纏っていた。ローズマリーに負けず劣らずの、素晴らしいボディラインである。
「うわあああ、うわあああ~!」
女性の裸体にまるで免疫のない彼は、思わず悲鳴を上げた。インカムからはリディルとローズマリーの声が飛び交ったが、それを耳に入れる余裕はない。
女は暗闇でも艶やかに光る紅い唇の端を上げた。
「あんまり暴れると、下に落ちて頭がグチャリと壊れちまうよぉ? まあ、潰れた脳っていうのもいいけどねぇ」
女はくつくつと楽しそうに笑う。
「お前のような美しい娘の脳は、出来るなら綺麗なまま食べてやりたいからねぇ。大人しくしてな」
「──食べ!」
ヴァンガードは青くなる。
「今まで攫った方々も、た、食べたんですか!」
「ああ、もう! ドレス、邪魔ー!」
バサバサとドレスの裾が顔を覆い、何が起きているのかすら確認することが出来ない。
「ちょっと、静かにおしよ。まったく、公爵家令嬢が聞いて呆れるね。なんだい、その男みたいな声は」
やっとのことでドレスから顔を出すと、そんな声が聞こえてきた。
吹き荒れる風に目を細めながら、声の聞こえてきた方へ目をやる。
まず尖った耳が目に入った。弱い月の明かりに照らされる艶やかな黒髪が風に靡き、そこから覗く白い横顔は、女人のものだった。
背中に硬質そうな黒い翼を持ち、限りなく“無い”に等しい布地の少ない黒い衣装を纏っていた。ローズマリーに負けず劣らずの、素晴らしいボディラインである。
「うわあああ、うわあああ~!」
女性の裸体にまるで免疫のない彼は、思わず悲鳴を上げた。インカムからはリディルとローズマリーの声が飛び交ったが、それを耳に入れる余裕はない。
女は暗闇でも艶やかに光る紅い唇の端を上げた。
「あんまり暴れると、下に落ちて頭がグチャリと壊れちまうよぉ? まあ、潰れた脳っていうのもいいけどねぇ」
女はくつくつと楽しそうに笑う。
「お前のような美しい娘の脳は、出来るなら綺麗なまま食べてやりたいからねぇ。大人しくしてな」
「──食べ!」
ヴァンガードは青くなる。
「今まで攫った方々も、た、食べたんですか!」