Faylay~しあわせの魔法

「ごめん」

フェイレイは重い音を響かせて振り下ろされる斧を避け、地面を転がった。

「前線に出して」

転がった先に落ちてくる、びょんびょん跳ねるカラフルなボールも身をよじってかわす。

先程ほんの少し触れただけで大爆発を起こした。幸い、リディルが砂の防御壁で防いでくれたけれども。

『いいよ。魔族が出たら、出て行くつもりだった』

インカムから聞こえてきた声の主は、すぐ後ろを駆け抜けていく。

それを追おうとする道化師の前に素早く回りこみ、闘気をまとわせた剣を振り落とす。それは牧草地を何十メートルも削り取っていったが、道化師には傷ひとつつけることは出来なかった。

道化師は影のように揺らめき、消えてしまうのだ。

彼の周りを飛び交っているいくつものカラフルなボールだけがその斬撃を受け、次々に大爆発を起こしていく。

『アライエルギルドから応援が来るから、それまで』

「ああ」

頷きつつ、道化師を追う。

微かに残る気配は、またリディルを追いかけている。

「追わせるか!」

助走をつけて飛び上がり、ふわふわと空を飛んでいた道化師の身体を、彼を護るように飛び交うカラフルボールを見事に避けて一閃する。

だが──。

道化師の身体は、腰のあたりから真っ二つに割れ、フェイレイの剣は何もなくなった空間──道化師の上体と下体の間──を潜り抜けた。

「な……」

あまりの驚きに、一瞬動きを止めてしまった。道化師の目が弓のように細くなる。

< 440 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop