Faylay~しあわせの魔法
「ごめん」
フェイレイは重い音を響かせて振り下ろされる斧を避け、地面を転がった。
「前線に出して」
転がった先に落ちてくる、びょんびょん跳ねるカラフルなボールも身をよじってかわす。
先程ほんの少し触れただけで大爆発を起こした。幸い、リディルが砂の防御壁で防いでくれたけれども。
『いいよ。魔族が出たら、出て行くつもりだった』
インカムから聞こえてきた声の主は、すぐ後ろを駆け抜けていく。
それを追おうとする道化師の前に素早く回りこみ、闘気をまとわせた剣を振り落とす。それは牧草地を何十メートルも削り取っていったが、道化師には傷ひとつつけることは出来なかった。
道化師は影のように揺らめき、消えてしまうのだ。
彼の周りを飛び交っているいくつものカラフルなボールだけがその斬撃を受け、次々に大爆発を起こしていく。
『アライエルギルドから応援が来るから、それまで』
「ああ」
頷きつつ、道化師を追う。
微かに残る気配は、またリディルを追いかけている。
「追わせるか!」
助走をつけて飛び上がり、ふわふわと空を飛んでいた道化師の身体を、彼を護るように飛び交うカラフルボールを見事に避けて一閃する。
だが──。
道化師の身体は、腰のあたりから真っ二つに割れ、フェイレイの剣は何もなくなった空間──道化師の上体と下体の間──を潜り抜けた。
「な……」
あまりの驚きに、一瞬動きを止めてしまった。道化師の目が弓のように細くなる。