Faylay~しあわせの魔法
「ああ、もうっ」

靴を足からもぎ取るように脱ぎ捨てると、周り囲み始めた黒い飛行物体に向けて魔銃を構えた。

リディルも視線を走らせ、飛行物体を確認する。蝙蝠のようだった。

バサバサと羽音を立てながらリディルとヴァンガードに集団で襲い掛かってくる。

「リディルさん!」

リディルはチラ、とヴァンガードを見た後、蝙蝠の“向こう側”を見た。

「ヴァン、蝙蝠任せるね」

「は、はいっ」

ヴァンガードは魔銃に火の精霊ティナの力を装填した。

対象が多すぎるので、連射モードに切り替える。これはつい最近、リディルに相談して改造したばかりだ。

魔力の消耗も激しくなるのであまり多用は出来ないのだが、景色を遮るほどの数が現れては仕方ない。

構えた魔銃のトリガーを引き、火弾を乱れ撃つ。

目に留めるのがやっとのスピードで飛び回っている蝙蝠は、一瞬で火に包まれ次々に落ちていった。

「腕、上げたね」

リディルに褒められて、ヴァンガードは少しだけ口元に笑みを浮かべると、更に火弾を放った。

火の玉に囲まれたリディルは、その先を見据える。

風に紛れて気配を追いきれない、一体の魔族。

「お前は、王の血筋か?」

女の声が、耳元でした。

振り返らずに背後にウィルダスを召喚する。地面から突き出る地の刃が魔族の女に襲い掛かったが、風のようにその気配は薄れてしまった。

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