Faylay~しあわせの魔法
「超音波……ですか?」

ヴァンガードは落ちていく蝙蝠を眺めながら、そう呟く。

氷の精霊と鋼の精霊が手を取り合い、音を調律している。その音色が蝙蝠たちの“目”を狂わせているのだ。

「お前ぇ……最初からこれが目的で、柱を……!」

女は紅い唇を裂けんばかりに開けてリディルを睨みつける。

スピードを殺す意味もあったが、本当の目的は、彼女たちの“目”を潰すこと。蝙蝠と同じ性質をもっているのなら、有効な攻撃方法であると思ったのだ。

しかしこれだけでは倒しきることは出来ない。

次の精霊を召喚しなくてはと、後退して女から距離を取りながら喚ぼうとすると、それより早く女の黒い爪が襲い掛かってきた。

苦し紛れに出た一撃だったが、それでもリディルに避けきれるスピードではない。

衝撃に構えることも出来ずに固まっていると、横から火の弾が飛んできて、女の横っ面を吹き飛ばした。

「ぐああああっ」

女は顔を抑えながら、もんどり打って倒れこむ。

その隙にヴァンガードがリディルの前に回りこみ、女に向けて魔銃を構えた。

「この方に触れることは、僕が許しません!」

と、更に火弾を撃ち放った。

瞬発力なら、精霊士よりも魔銃士の方が上なのだ。攻撃の先陣を切る役割を担うのも、この職業なのである。

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