Faylay~しあわせの魔法
「この、小娘どもが……!」

女はギラっと目を輝かせると、“小娘”に見える2人を睨みつけた。そして、人間の耳には聞こえない高い声を上げる。

ドン、と空気が震え、雲海ごと精霊たちを吹き飛ばされる。代わりにまた蝙蝠たちが復活して女の周りに集まりだした。

「リディルさん、逃げてください」

この力の高まり方はまずいと、ヴァンガードがリディルを振り返る。

「……ううん」

リディルは首を振った。

背後で繰り広げられている戦闘の様子を、肌で感じ取る。

──駄目だ。助けを求めることは出来ない。余裕がなさすぎる。

アライエルギルドから応援が来ると言ってはいたが、一向に駆けつけてくる気配がない。どこかで足止めされているのかもしれない。

インカムからはシルヴァやセバスチャンの自分たちを気遣う声がずっと聞こえている。

依頼主である彼らからもこのまま目を背けさせていなければならず、ここで退くことは出来ないのだ。

「ヴァン、時間を稼いで。……やってみるよ」

リディルはすう、と息を吸い込むと、偉大なる力を召喚するため、気を高めた。





リディルとヴァンガードなら大丈夫と信じ、フェイレイは目の前の敵を倒すことに集中していた。

大爆発の起こる瞬間にその中心から逃げ出し、牧草の上に伏せた。

駆け抜けていく爆風をやり過ごすと、すぐに上から殺気が降ってきた。

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