Faylay~しあわせの魔法
そこへ道化師が近づいてくる気配がある。

分かってはいるのだが、逃げ切れない。

前後で挟まれてしまったので、横に飛んでみたが、大男もその動きについてくる。その重そうな身体のどこにそんな脚力があるのか、不思議なくらいだ。

「ピンチだ、俺」

口元に笑みを浮かべるフェイレイの眼前に、カラフルボールが飛び込んでくる。

髪の毛一本に触れただけでも爆発するボール。それごと、大男は斧で斬り刻もうとしてきた。

咄嗟に剣を掲げて斧と爆発、両方の衝撃に備えた。

と、そこへ。

足元から鋼の柱が突き出し、間に割って入ってくる。

「リディル!」

柱は斧に真っ二つに割られたが、それでも一瞬のうちに逃げる時間は与えられた。

カラフルボールの爆風に飛ばされながらも、大男と道化師から距離を取る。

周りにサッと視線を走らせると、リディルが鋼の精霊を召喚し、牧草地一帯に鋼の柱を立たせているのが見えた。

そのついでにこちらへの援護もしてくれたようだ。

「ありがと。ごめん」

自分たちもピンチだろうに、こちらにまで気を使わせて申し訳ない、と謝りながら、目の前の敵に意識を集中させる。

道化師は相変わらず、笑っているのかそうでないのか、仮面のように表情を動かさない。けれど、大男の方は別の力の介入に気分を害したようだった。

ブン、と振り下ろした斧は、地面に亀裂を走らせ、轟音を響かせながら地を真っ二つに割った。

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