Faylay~しあわせの魔法
やられる。

そう思った瞬間。

真横から飛び出してきた影に肩を抱かれ、ぐるりと身体が回転した。

ゴオオウ、と低く風が鳴いて、女の絶叫が響き渡る。

その声に顔を上げると、鋭い瞳で敵を睨み据える、フェイレイの凛々しい顔が間近にあった。


フェイレイはリディルに目をやると、白い頬に走る赤い線に顔を顰めた後、女へ視線を戻した。

「お前、リディルに傷つけて……!」

ゆらり、とフェイレイからまた覇気が立ち上がる。

牧草の上に転がった女は、身体をビクリと震わせながら後退った。フェイレイはリディルを背にやると、ジリジリと女に近づいていく。

「お前、その覇気……なんなの……」

ビリビリと肌に突き刺さり、見えない圧力に屈服させられそうになる。

女は歯噛みし、フェイレイを睨みつけた。

「ここで、退くわけには……皇女を、連れ帰らなくては……」

人間相手に恐怖を感じ、身体を震わせる。それは魔族の中でも高位にある彼女たちには屈辱だった。

「どきな、小僧!」

女は捨て身でフェイレイに向かって飛び込んでいった。

フェイレイはそれより早く、剣を振り落とす。

草の上を走る剣圧は女の身体を一瞬で飲み込み、吹き飛ばした。断末魔の叫び声が辺りに木霊する。

それを見届け、すぐに振り返った。

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