Faylay~しあわせの魔法
「リディル! リディル、大丈夫か!?」

草の上に座り込んでしまったリディルの肩に手を置き、素早く彼女の身体をチェックする。

服が細かく切り刻まれ、至るところに出血の跡が見られる。

「ごめん……すぐに来れなくて」

白い頬に一直線に走る傷跡にそっと触れ、フェイレイは顔を顰めた。

「こっちこそ、ごめんね。……助けに行けなくて」

リディルはゆっくりと息を吐き出しながら、ビリビリに破けたシャツに手を伸ばす。

「……フェイ方が、酷い怪我だよ」

指先にぽう、と緑色の光が灯り、森の精霊フォレイスたちがぱっと現れる。

「俺のことはいいから、自分から治して」

リディルはフェイレイの言葉を無視し、離れたところにいるヴァンガードにもフォレイスを飛ばす。

「フェイ、まだ動ける? ローズさんを……」

『心配ご無用』

インカムから、ローズマリーの声が聞こえてきた。

『終わりましたわ』

振り返ると、遠くの方でローズマリーが手を振っていた。ここから見ても満身創痍なのが分かる。リディルはそちらへもフォレイスを飛ばす。

「リディル、休んで。無理しすぎだ……」

「また新手が来たらどうするの」

フェイレイの心配を、リディルは無表情に跳ね返す。

「回復は最優先」

緑色の光を纏ったフォレイスたちは、フェイレイの傷を癒すと、心配そうにリディルに飛びついた。

しん、と静まり返った闇の中、癒しの力を送るフォレイスたちが蛍の光のようにチラチラと淡く浮かび上がる。

その優しい光は戦いの終わりを告げているかのようで、仲間たちに安堵をもたらした。
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