Faylay~しあわせの魔法
しかし、思いがけずローズマリーから許可が下りてしまった。

ローズマリーと剣の稽古を始めたときに、彼女に勝ってリディルに告白すると宣言していたのだ。

世界一の拳闘士を倒せれば自信がつくだろうし、何より何かきっかけが欲しかったから。

(言ってもいいんだ)

フェイレイはくるりとリディルを振り返った。

「リディル、俺──」

正面からリディルを見つめ、彼女の肩を捕まえようとしたのだが、リディルはスッと立ち上がると、ヴァンガードを振り返った。

「ヴァン、足は平気? 歩ける?」

「え? あ、はい。先程フォレイスに治していただきました。ありがとうございます。リディルさんこそ、大丈夫ですか?」

「うん」

女王を召喚した後だというのに、リディルはふらつきながらも何とか歩き出した。成長した証だ。

「リディル、待って、話が……」

「そうだ」

フェイレイがリディルに追いすがると、リディルが急に立ち止まって振り返った。

「ヴァン、裸足なの。フェイ、おんぶ出来る?」

「え、ああ、うん……」

フェイレイは大人しく頷き、遠慮するヴァンガードをひょいと背中に背負った。

──この状態で告白は、さすがに……ないだろう。

「ハア……」

知らず、溜息が出る。

つくづく、タイミングとは難しいものである。

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