Faylay~しあわせの魔法
宿に戻ると、煌々と路地を照らす街灯の下に、馬四頭に引かせる馬車が停車していた。

「お戻りになられましたか。お疲れ様でございました」

馬車の扉前で、執事のセバスチャンが頭を下げた。

「急ではございますが、これより王都ヴァルトまでご一緒していただきたいのです」

「ええ、魔族に襲われているのですね」

「いえ、只今、魔族の攻撃は凌いだと連絡がございました」

「では?」

ローズマリーが訊ねると、馬車の窓からシルヴァが顔を出した。

「お前たちに褒美を取らす。一緒に参れ」

「まあ、そうですか」

どうします? とローズマリーはフェイレイを振り返る。

どうせ目的地は王都ヴァルトだ。このまま一緒に行ってもいいだろうと、荷物をまとめて馬車に乗り込んだ。



セバスチャンが御者となり走らせる馬車は、ほとんど明かりのない森の街道を静かに進んでいく。

「シルヴァさんの家は王都にあるのか」

ゴトゴトと微かな振動を感じながら、フェイレイは向かいに座っているシルヴァに訊ねた。

「ああ。王城は山裾に広がっている」

シルヴァは腕組みをしながら答えた。

「……王城?」

「そうだ」

「え?」

「そこに住んでいるのだ」

しれっと、事も無げにシルヴァは言った。

「私は王女だからな」
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