Faylay~しあわせの魔法
「そんな話知らないぞ! なんでセルティアに伝わってないんだ!」

あまりの声量に、イライザをはじめ、全員が両耳を手で押さえ、顔をしかめた。

「そんなことは私は知らん。ああ、もしかしたら……『勇者』がセルティアには帰らなかったからなのかもしれないな。勇者はあの童話の通り、『姫』とともに行方不明になったらしいから」

「そうか、そうだったな」

フェイレイは目を爛々と輝かせ、頷く。

「千年も昔の話だ……話が風化しているのもあるのだろう。だが、そうなるとセルティアにはもう、勇者の血筋は残されていないのだろうか。勇者の家族にはその功績を称え、我が国の名を与えているはずなのだが」

「『アライエル』か?」

「いや、これだ」

イライザは自分の頭上を指差した。

「我が国の紋章、『グリフィン』。我が国の英雄、世界の英雄、そういう印として贈ってあるのだがな……千年のうちに果てたか……」

イライザは少し残念そうに息をついた。

「えー、そうなの? もしかしたら俺、勇者の子孫とすれ違っているかもしれないって思って、期待したのにー」

フェイレイも残念そうに溜息をつく。

その後、複数の視線を感じたので振り返ると、リディル、ヴァンガード、ローズマリーが揃ってフェイレイを凝視していた。

「……ん? え、何?」

思わず仰け反るほどの強い視線だった。

「どしたの?」

戸惑い気味に訊ねると、ローズマリーが口を開いた。

「フェイレイ、『グリフィノー』」
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