Faylay~しあわせの魔法
「これが勇者の像ですのね」

一緒についてきたローズマリーは、フェイレイの少し後ろからそう呟いた。

「世界大戦を鎮めた英雄……にしては、このような場所で、放置されていると言ってもいい佇まいですけれど」

と、イライザを振り返る。

「ああ、良くは分からないのだが……あまり仰々しくするな、自然に朽ち果てさせろ、と代々の王が言い付かっているらしい」

「謙虚な方だった、ということでしょうか?」

「恐らくな」

「だからアライエル以外には、童話という形でしかその武勇伝が伝わっていないのかしらね?」

「私も良くは知らん。父上ならば何かもっと他の話も知っているだろうが……昔の話だからな」

イライザは降り注ぐ陽の光に目を細めながら、勇者の像を眺めた。

「では、国王陛下に謁見したいものですわね。この国は他の国とは違う、特別な恨みを買っているようです。恐らく、千年前の大戦での勇者の活躍が関係していると思いますの」

「うむ。そうなのだろうな」

戦闘中に魔族から聞いた話を総合すると、そう結論付けられた。

千年前の大戦で人間と精霊、そして魔族の間でどのような争いがあったのか、知らなければならないような気がするのだ。

「父上は魔族増加による被災地視察のため、今は都から離れている。明日になれば戻られるだろう」

「分かりました。取次ぎをお願いいたしますね、王女様」

にこりとローズマリーが微笑むと、イライザは眉を顰めた。
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