Faylay~しあわせの魔法
「そなた、何者だ? ただの傭兵ではなかろう?」

「……さあ、どうでしょう」

ローズマリーはただ微笑んで誤魔化した。

彼女の身分がバレては困ると、後ろに控えていたヴァンガードが助けに入る。

「もうひとつ、はっきりさせたいことがあるのですが。……彼らが『猊下』と呼んでいた人物のことです」

「そうですね」

ローズマリーもイライザも頷く。

「彼らの言葉によると、その『猊下』が世界の国々を滅ぼしている……そう聞こえました。でも実際、滅ぼしているのは……皇都の星府軍ですわ」

「その後で、魔族が国を乗っ取っているのですよね」

「そうです。つまり……」

ローズマリーは笑みを消し、グッと拳を握り締めた。

「その『猊下』が、惑星王を操っているのですわ」

怒りを滲ませながらも、しかしそれを表に出すことを制御しているような声で、ローズマリーは目を閉じた。

やっとカインを操っている人物を特定出来た。

恐らく間違いない。

全世界の人々の頂点に立ち、慈悲深く強い心を持つ彼を押さえ込めるだけの力量を持つ者。どれほどの者かと思っていたが……その正体は、やはりとんでもない人物だった。

「魔族が『猊下』と崇める人物……それはただ一人、ですわね」

ヴァンガードも、リディルも、フェイレイも。

厳しい面差しでその名を呟いた。

「『魔王』……!」

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